経済で読み解く日本史⑥平成時代【 14.リーマンショックと民主党政権】

デフレの長いトンネルとリーマンショックで14万人もの自殺者を生んだ元凶は何だったのか?バブル崩壊からアベノミクス、そしてコロナ禍の令和へ!
今明かされる「失われた30年」の真実。平成を正しく理解した者だけが令和時代を生き残れる。

今回紹介する本

経済で読み解く日本史⑥ 平成時代

出版社: 飛鳥新社
発売日:2020/7/17
単行本:302ページ(全6巻1656ページ)
著者:上念 司
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。
在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。
日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。
2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。
2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。
金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

目次

この本を読むきっかけ

ハウツーやハックといった実用書を好んで読んでいましたが、それなりのレベル感の本(初心者を対象にしていない)を読むにつれ、著者がフツーに使用する歴史的エピソードや逸話、語彙・表現などが私には分からないことが多すぎて知識がないことにショックを受けました。
仕事上の知識獲得のためいつも選ぶジャンルである「経済」に加えて、これから学びたいと思っている「歴史」が一緒になっているタイトルでこの本を選びました。
上念さんはメディアでよく拝聴・視聴させていただいていたこともあり「入りやすいかな」と思ったのもきっかけです。
しかし、

リーマンショックと民主党政権

できごと総理大臣日銀総裁金融政策
(政策金利)
2008リーマンショック(9月)福田康夫 ~8月
麻生太郎 9月~
福井俊彦~3月
白川方明4月~
10月 0.30%
12月 0.10%
2009民主党政権発足(8月)麻生太郎 ~9月
鳩山由紀夫 9月~
白川方明
2010鳩山由紀夫 ~6月
菅直人 6月~
白川方明0~0.1%程度
2011東日本大震災(3月)
三党合意
菅直人 ~9月
野田佳彦 9月~
白川方明
2012自民党与党復帰(12月)野田佳彦 ~12月
安倍晋三 12月~
白川方明

リーマンショックの2日後、総裁候補者の一人、与謝野馨経済財政担当相(当時)はリーマンショックについて「ハチが刺した程度。日本の金融機関が傷むことは絶対にない」と発言、極めて甘い認識でした。
2008年9月、総裁選を勝利した麻生太郎氏は、2008年4月に日銀総裁に就任した同郷の白川方明氏の金融政策には一切口出ししないまま、財政政策だけでデフレ脱却を試みます。

変動相場制の国において、金融政策のサポートなしに財政政策を発動すると、円高を通じてその効果は逃げてしまいます(マンデル=フレミング効果)

大規模な財政政策の財源として円資金を市場で調達すれば、市場の円が不足します。
円が不足すれば円の価値が上がり、円高で景気が悪くなったところに後から財政政策で穴埋めしても効果は限定的となります。

2008年8月の福田内閣の時に1ドル100円台後半だった為替は、2009年11月の麻生内閣の時には1ドル80円に突入していました。

この超円高によってエルピーダメモリが1800億円もの大赤字を出し(4年後に倒産)、シャープが経営不振に陥ったり、製造業の海外移転がさらに進み、国内産業は衰退しました。

日本の銀行は仕組債などをほとんど所有しておらず、何の被害も受けなかったはずなのに、1年後の実質GDPの落ち込みは最大となっています。

各国中央銀行が大規模なゼロ金利政策に加えて金融緩和(量的緩和)を実施しているにも拘わらず、当時の日銀総裁白川方明氏が頑なに拒否、放置したのが麻生首相でした。
ドルやユーロポンドが大量増刷されているにも拘わらず、日本円のみが不足するという異常事態を自ら招きました。

リーマンショックから2年後の2010年10月、日銀や要約ゼロ金利に復帰したものの、国債の買い入れは短期国債に限られた名ばかりの金融緩和を行いました。
金融システムが不安定化しそうになったら日銀は何かするが、そうならない限り何もしない。失業が増えても、超円高が進んでも、経済成長率が著しく鈍化しても、それは政府や民間企業の努力不足であり、我々は関知しないという、まさに「日銀貴族」の真骨頂でした。

民主党政権へ

経済的に困窮した人々はヤケを起こして危険思想に走る。2009年8月の衆院総選挙で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党へ政権交代が起こりました。
鳩山内閣の財務大臣の藤井裕久氏は、円高原理主義者かつ財政再建原理主義者でもありました。口先で円高をけん制するばかりで、実際には為替介入するわけでもなければ、日銀に金融緩和を要請するわけでもありません。
市場からはさらなる円高アタックをしかけられ、東日本大震災直前の2011年2月には1ドル81円46銭という記録的水準に達します。

それから鳩山内閣は郵政民営化の見直しと称した、ガバナンス欠如を招く愚かな「民営化修正」を実行し、後に発覚するかんぽ生命による二重契約問題など様々な不祥事の原因となりました。

2010年6月に鳩山内閣が退陣し、菅直人氏を首班とする菅内閣が成立しました。菅氏は財務官僚に洗脳されて完全に財政再建原理主義者となり、内閣府参与を務める小野義康氏の増税理論を信じてしまいました。
2010年7月の参院選では「増税すれば景気が良くなる」と演説し、民主党は惨敗。2009年まで衆参ねじれ現象が起こります。

東日本大震災

2011年3月11日に東日本大震災が起こりました。
震災から2日後、自民党の谷垣禎一総裁は菅首相に復興増税を提案します。

しかし、大規模な日銀国債引き受けによる支援こそが本来政府がやるべき震災復興でした。
復興されたインフラは将来にわたって多くの人が使います。その財源は将来使う人も応分に負担すべきです。
そのためには国債を財源とし、それを将来にわたって借り換えていく必要があります。

ところが、財務省は単に債務残高が増えるのが嫌だという理由だけで、この案を歯牙にもかけませんでした。
日本人のやさしさに付け込み、復興増税はあっと言う間に国会を通ってしまったのです。
増税では財源の手当ても遅く、規模も小さく、世代間の応分な負担が図れません。
税率を上げても税収がその金額に達するかどうか確約することもできません。
ところが菅首相は財務省の言いなりでした。

「消費税増税」最悪の決断

震災対応で醜態をさらした菅首相の支持率は急落、2011年9月に野田佳彦氏を首班とする野田内閣に代わることとなりました。野田氏こそ財務省に完全に洗脳され、後々禍根を残す「社会保障と税の一体改革」(三党合意)の決断をしてしまいました。

民主、自民、公明の3党は、5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる法案成立に向けて前進していました。
震災復興もまだ終わっていないのに消費税増税は正気の沙汰ではありませんでした。

財務省はなぜ増税にこだわるのか

財務省が消費税増税の必要性として挙げる理由は、少なくとも3回変わっています。

  1. 消費税導入時の平成元年 → 直間比率の見直し
  2. 橋本内閣の消費税増税から野田内閣以前まで → 財政危機、財政再建
  3. 野田内閣以降 → 社会保障の安定財源

昭和の頃、日本の所得税の最高税率は住民税も含めて88%でした。これでは勤労意欲を削いでしまうとして、直接税と間接税の比率が見直されることになりました。
そのため、消費税が導入された平成元年には、並行して所得税の大幅な減税も行われました。
現在所得税の最高税率は住民税も含めて55%となっています。2019年税収全体に占める消費税の割合は33.4%に達し、フィンランドやアイルランドなど比較的間接税の割合の高い国と同等になりました。その意味では直観比率の見直しはすでに終了したと結論付けていいでしょう。

次に、バブル崩壊以降に喧伝された財政危機説ですが、残念ながらこの説には根拠がありません。
そもそも、政府債務は完済する必要がなく、債務総額よりも債務の維持可能性が重要だからです(公債のドーマー条件)

また特別会計まで含めた政府のバランスシートからも、日本が財政危機ではないことが導き出せます。
2018年3月末現在の「国のバランスシート」によれば、政府の資産総額1000兆円に対して、負債総額は1500兆円になっています。一見500兆円の債務超過に見えますが、資産にはある重要な勘定が含まれていません。
それは日銀が持つ国債です。政府が日銀に売却した国債は、誤解を恐れずに言えば返さなくていい借金です。なぜなら金利は国庫納付金として政府に還流し、元本も同額の国債を渡すことで永久に借り換えることが可能だからです。2018年3月末現在、日銀は448兆円の国債を保有しています。
この分を資産に加えると、政府の債務超過は52兆円に激減します。
政府はこの他にも、徴税権や通貨発行権を持っていますが、その資産価値は数千兆円に上る巨額なものです。
もろもろ足しこむと52兆円の債務超過など吹き飛んでしまいます。
実際に2018年の国際通貨基金(IMF)財政モニターにおいて、日本の債務はゼロだと認定されています。

このことを繰り返し突かれて返答に窮した財務省は再び論点を変え、今度は社会保障充実のために財源が必要だと言い始めたのです。これこそがあの三党合意で決まった社会保障と税の一体改革でした。

そもそも消費税の社会保障目的税化というのは先進国で実例がありません。
どの先進国においても社会保障財源は基本的に保険料だからです。

貧しくて保険料が払えない人の分は、累進課税でお金持ちから徴収し補填する、これが世界の常識です。

ところが、日本の財務省は増税をしたいばかりにこの世界の常識を覆し、間接税である消費税を社会保障財源と結びつけてしまいました。

社会保障が保険で賄われる限り、それを負担する人と給付を受ける人は同一人物です。デタラメな給付はいずれ自分の首を絞めるため、歳出に抑制が効きます。
ところが消費税を社会保障財源とすると、歳出に抑制が効かず、給付が無限に拡大する可能性があります。

消費税を増税する正当な根拠は存在していないのです。
ではなぜ消費税を増税するのかというと、財務省の権限が大きくなるからです。

そんな極悪な三党合意にも一つだけいいことがありました。それは社会保障と税の一体改革案を通す代わりに、野田首相は近いうちに衆議院を解散して国民に真意を問うと約束したことです。

感想

リーマンショックからの民主党政権、そして東日本大震災・・本当にこの時期は世の中が不安定で見通しが持てない時代であったのを思い出しました。
「リーマンショックだったから」という言葉で不景気の理由を済ませてきましたが、よく考えれば先進各国が復活する中で日本だけが長期停滞するのはおかしいですよね。
またもやここで日銀よる金利政策の失敗だったとは・・

消費増税に関しても「○○のための消費増税」と、そういえばここまでに3回言っていることが変わっているのです。しかし、国民はそれについてあまり関心がないので増税の理由はすっかり忘れてしまっています。
というより「国は増税をしたがるものなのだ」というマインドセットになってしまっていると思います。
「儲けようとすると、国はさらに税金を取ろうとする」このようなシステムでは、イノベーションも起こりにくいし、企業家も若者も海外へ逃げていってしまうのは分かる気がします。

この記事を書いた人

FPあちこのアバター FPあちこ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

保険や投資信託などの金融商品の販売はしないコンサル専業FPです。
「読書好き」と言うわけではありませんが、コンサルのこと、自己啓発のこと、人生のことなど、"知りたいこと"や"課題解決"の目的があって本を読んでいるので、基本的にビジネス書やハウツー本です。
当ブログは、完全ネタバレの自分自身のための覚え書きのために作成しております。

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