どれだけ考えても、伝わらなければ意味がない。でも、話し方のスキルだけでは、人の心は動かせない。コンサルで叩き込まれたのは、人の心を動かす、思考の「質」の高め方でした。
本書は「頭のいい人」が何をどう考えているかを明確にし、誰でも思考の質を高め、「頭のいい人」になれる方法を伝授します。

頭のいい人が話す前に考えていること
出版社: ダイヤモンド社 (2023/4/19)
発売日:2023/4/19
単行本:338ページ
著者:安達裕哉
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。
この本を読むきっかけ
ブックランキングの上位に入っていたのと、「コンサル」本は興味があったので手に取りました。
「頭のいい」「頭がいい」とつく本が山ほどある中で「話す前」と言う箇所が非常に気になり購入しました。
話をする直前のことかな?と思っていましたが、本書はそのずっと前にある「マインドセット」の話でした。
「話す」に至るずっと前に考えておかなくてはいけないこと、思考法について書かれています。
アツいタイプのコンサルタントも多い中、冷静で堅実な著者の人柄が伝わってきます。
「ノリ」や「キャラ」でない、本当の実力とは何かを教わった気がします。
著書の中でも私がとくに大事だと思ったところだけをピックアップしてありますので、詳細を知りたい方はぜひ本書をご購読下さい。

第二部 「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法
話が浅くなる3つの理由
①根拠が薄い
②言葉の「意味・定義」をよく考えずに使う
③成り立ちを知らない
深いと感じさせるためには、どう掘り下げるかが、肝心なのです。
1.「客観視」の思考法
少ない情報を信じ切るとバカに見える
「少量の、根拠の薄い情報」に依存しているように見えると、残念ながらその人の話は浅く聞こえてしまいます。
また、著名人や政治家を引き合いに出して話す人も同様です。
頭のいい人は、物事をできるだけ正確に、客観的にとらえようとします。
バイアスに少し意識的になるだけで、「ちゃんと考えている人」になることができます。
- 1.確証バイアス
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自分の都合のいい情報ばかり集めて、自分にとって都合の悪い情報は無視する傾向
- 2.後知恵バイアス
-
その結果を知ったから判断しているのに、あたかもその結果を知る前から予測していたように考えてしまう心理状況(評論家思考)
- 自分の意見と真逆の意見も調べる
- 統計データを調べる
言葉に敏感たれ
「ちゃんと考えてから話す」とは、相手が受け取る言葉の意味を想像し、できるだけ定義の齟齬ができないように話すということです。
言葉に敏感になり、定義を掘り下げることは、言い換えれば「思考の解像度を上げる」ということになります。
言葉に敏感であることは、言葉の定義を明確にすることであり、それにより、見ている世界をより鮮明にはっきり映し出すことができます。
「なんとなく考えている」ことを「ちゃんと考える」に転化するには、言葉の定義を明確にし、思考の解像度を上げる必要があるのです。
成り立ちを知ろう
成り立ちは、人間に置き換えると「生い立ち」です。
成り立ちを知ることで、人と違うアイデアも、深い議論も生まれます。
2.「整理」の思考法
頭のいい人は話す前の「理解」に時間を使う
頭のいい人は、たとえ難しい話でも分かりやすく話せるのは「物事の本質を理解できている」からです。
いくら話し方を注意しても、わかりやすく話すことはできません。
わかりやすそうな話をしているだけで、わかりやすい話にはならないのです。
人の心を動かせるかも、分かりやすく話せるかも、理解の深さに比例するのです。
考えるとは整理すること
元マッキンゼーのコンサルタントである波頭亮氏は、
「思考」とは、比べる情報要素が「同じ」か「違う」かの認識をすること※と述べています。
理解するというのは「分ける」ことであり、整理することなのです。
物事を深く理解するには、どれだけ対象物を分けて整理できるかにかかっているのです。
だれでも結論から話せるようになる法
結論から話す、というのは相手に「聞くスイッチ」を入れる行為です。
結論から話そうとしても話せないのは、「重要な情報」と「その他の雑多な情報」をきちんと分けることができていないからです。
結論から話せるようになるためには「結論が何かはっきりさせること」です。
だれでも結論から話せるようになる最も簡単な方法は、結論とは何かを相手に聞くことです。
結論とは何か聞けない場合は、「相手が最も聞きたいであろう話」からします。
事実と意見を分ける
事実と意見を分けられない人から話を聞くと、状況を把握するのに通常の3倍の時間がかかります。
人は、出された質問が難しいと、それを簡単な質問に置き換えてしまいます。
「事実」と「意見」を分けて話すのは「注意力」の問題です。
感想は、主観的な事実です。証明可能な事実は、客観的事実です。
意見はあくまで個人的な考え、つまり主観ですが、感想ではありません。
意見というのは主観的な事実に根拠をつけ加えることで他の人にも納得できる形になったものです。
3.「傾聴」の思考法
他人が話しているときに、自分が話すことを考えていないか
社会に出て、経営者や管理職が愚痴をこぼす「話を聞けない人」は、話を聞こうとしない人ではありません。話を聞いているのに聞けない人です。
彼らは「自分の認識できたこと」だけ切り取って、話を聞いているのです。
自分の好きなことや興味のあることだけを聞くのではなく、細部にまで耳を傾け、相手の思いを感じ取るのが「ちゃんと聞く」ということなのです。
余計な口を挟まず「言いたいことはなんだろうか」と考えながら、まずは相手の話を正確に理解しようとします。
話す側の立場に立てば、相手がこのような態度で聞いてくれると「自分の話を正確に受け取ってくれた」という感覚になります。
何を言うかよりも、だれが言うか
アドバイスを受けて納得し、行動に移すのは、その相手をよほど尊敬し、慕っている場合だけなのです。
アドバイスではなく、交通整理せよ
著者は「コンサルタントはアドバイスする職業ではなく、交通整理する職業だ」と認識するようになりました。
それは実際に、コンサルタントとしての仕事のほとんどを、経営者の悩みを聞き、問題点を洗い出し、整理することに費やしていたからです。
整理とは「いらないものを捨てて、必要なものだけ残す」行為です。
「相手の話を整理する」とは、相手の話から余分な情報を捨てて、判断に必要な情報だけを残してあげる行為、と言い換えられるでしょう。
相手の話を整理しながら聞くことで、相手の考えていることを、話している本人よりも深く理解することができ、行動に移すことができます。
- 1.ゴールの確認
-
注意点として、ここでいなければならないのはあくまで「確認」であって「提案」ではありません。
- 2.考えていることを聞く
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どんな人でも、相談すべき課題があれば、何かしらの解決策を持っているものです。あるいは、それまで悩んできた過程があるものです。
それを聞かずに自分の考えを述べてしまうと、相手は「自分の考えを聞いてもらえていない」と不満を持つケースが多いので、必ず最初に相手の考えを聞き、スッキリするまでモヤモヤしていることを吐き出してもらいます。 - 3.話を整理して相手の意思決定を助ける
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相手が相談をしてきたということは、何かしらの決定を妨げる要因がある、ということです。
「こうしたい」という相手の意志が聞けたら、それを素直に推してあげましょう。
あなたの思う解決策やアドバイスを話す必要はありません。
あえて何かをするならば、つじつまが合わない部分を確認だけしてください。
「こうしたい」という意志がない相手であれば、そのまま相手の話を聞くだけにとどめてください。
その人は話を聞いてもらいたいだけなはずです。
4.「質問」の思考法
人がだれかに相談してスッキリする瞬間
言語化されていなかった思いが明確になったからではないでしょうか。
モヤモヤしていたことが言語化され、明確になると、やるべきことがはっきりし、行動に移すことができます。
だれかに相談して、相談してよかった、また話したいと思うのは、正しい答えを教えてくれたときではなく、一緒に考えてくれて、一緒に答えにたどり着いた瞬間です。
これが、人が人とコミュニケーションをとる理由ともいえるでしょう。
気づかなかったことに気づくためには、深く聞く技術が欠かせないのです。
米国政府やグーグルが使う質問術
グーグルの人事トップであったラズロ・ボック氏が、面接の精度を上げるために取り入れたのが「構造化面接」と呼ばれる手法です。
この手法は、入社後のパフォーマンス予測精度が高いことが分かっています。
構造化面接の質問は5種類です。(導入の質問が2種類、深掘りの質問は3種類)
- 導入の質問①過去に行った行動についての質問
- 導入の質問②仮定の状況判断に基づく質問
- 深掘り質問①状況(シチュエーション)に関する質問
- 深掘り質問②行動(アクション)に関する質問
- 深掘り質問③成果に関する質問
採用面接ですら、導入の質問ふたつと深掘りの質問3つだけで成り立ちます。
この質問術は、面接以外の場面でも、プライベートでも大いに力を発揮してくれます。
質問の前に仮説を立てる
ちゃんと考えて質問するというのは、質問する前に、相手の立場に立ち、仮説をもって質問するということなのです。
仮説を立てて質問するというのは、質問の前に、さまざまな角度から物事を考えて質問するということなのです。
教わる技術
教わるのがうまい人は、聞きやすい人や身近な人ではなく「聞くべき人」を考えてから聞きにいき、さっさと課題を解決し、成長します。
教わり上手の人がしている質問を紹介します。
- 一度にひとつのことしか聞かない
- 目的を知らせる
- 要素分解して具体的に聞く
- 今までにやったことを細大もらさず伝える
答えづらい質問をしてしまう原因は、自分が何をわかっていないのかが、分かっていないことにあります。そこで「わからない」に至った経緯を話すことで「何がわからないかわかる」ことにつながり、的確な助言が得られるのです。
5.「言語化」の思考法
なぜ、できる人はすぐ電話してくる人を嫌うのか?
なぜこれほど、電話を嫌がる人がいるのかというと「他人とコミュニケーションをとる際に発生するコスト」が関係しています。
電話をする側にとっては、「言語化する」というコミュニケーションにおいて最も労力のかかるプロセスを、電話を受ける側にも負担してもらえるので、面倒ではありません。
受ける側が「とりあえず電話」を嫌うのは、「言語化する」というコミュニケーションにおける大きなコストを、目の前の作業を中断して、相手のために支払わないといけないのです。
メールの場合は、送り側が言葉を選ぶ、整理する、相手の反応を想像する、書き直すなど、さまざまなコミュニケーションコストが内包されています。つまり、言語化コストに内包されるさまざまなコストの全てを、話して(メールの送り手)が支払っていることになります。
コミュニケーションコストをどちらが払っているかを常に意識することが大切です。
言語化のコストを相手に支払ってもらっている限り「頭のいい人」として認識されることはありません。
言語化の質がアウトプットの質を決める
「言語化」とは、一般的には「思考を言葉にする」と言う意味で使われます。
著者は言語化の意味をもう少し広くとらえています。
言語化とは、単に言葉にすることに留まらず、アウトプット全般のことを指すものだと考えています。
プロフェッショナルは自分の思考回路を言語化できています。言語化なしには、繰り返し高度な作品をアウトプットすることはできません。
思考の質は、言語化の質を決めます。
言語化の質は、アウトプットの質を決めます。
アウトプットの質が高ければ、人の心を動かします。
人の心を動かせば、行動につながります。
つまり、ちゃんと考えるとは、突き詰めれば、人を動かすアウトプットを生み出すということなのです。
言語化の質を高めるたったひとつの型
「○○ではなく、△△である。」
この型は再定義によって生まれるアウトプットの形なのです。
考える労力を省く型ではなく、思考を深め相手にインパクトを与える最終手段の型だと思って下さい。
昨日観た映画を「面白かった!」しか言えないあなたへ
小並感=小学生並みの感想。「すごかった!」「面白かった!」「ヤバかった!」しか言えない状態。
「言語化」は、本質的には「習慣」に依存する力なのです。
実践を繰り返すことで、言語化する力が身につき習慣化します。
言語化を習慣にする方法をお伝えしましょう。
- 1. ネーミングにとことんこだわる
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人は、名前のないものについて、深く考えることはできません。
逆に名前を生み出すことで、新しい概念についても考察できます。
だから、できる人はまず考察の対象の「定義」を考える。
そしてその定義に名前を付ける。
そうすることで、他の人もその概念について考えることができる。
ネーミングは、思考の出発点となるのです。 - 2.「ヤバい」「エモい」「スゴい」を明日から使わない
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「ヤバい」「エモい」「スゴい」など、「語彙を貧弱にする安易な表現を使わないようにする」といった習慣が有効です。
- 3.「読書ノート」「ノウハウメモ」を作る
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語彙を増やすために有効なのは、古典的ではありますが、読書です。
インプットをいくら増やしても、アウトプットしなければ言語化能力は向上しないからです。おすすめなのは「読書ノート」を作ることです。
読書により得られた知見は、自分自身が思っているよりも曖昧なものですが、まとめを作ることによる言語化を通じて、明確になるからです。また「○○のノウハウメモ」を作ることも有効です。
おすすめなのは「学んだ10のこと」「大切な5のこと」などフォーマットを決め手しまうことです。
このようにノウハウメモを書く癖をつけることで、自然と相手から学ぼうという意識で人の話を聞くことができます。とにかく大事なのは、本を読んで「面白かった」で終わらせず、自分の言葉でまとめることです。
仕事で教わったことも同様です。
感想
この本は約半年前に読んで、記事(読書めも)も約半年前のその時にいったん作成しました。
しかし、機会があって記事をリライトするためにもう一度読み直すと、私自身、意外と実践していることが多いことに気がつきました。
「ノウハウメモ」はもう数年前からやっていますし、「読書ノート」はこの本を読む少し前にこのブログとして残すことを始めました。
読書ブログを継続している中で特に痛感させられたのは「言語化」です。
「手ごたえのある本を読みたい」と思っていると「読み手を選ぶような本」にあたることになります。
それなりの語彙、故事成語や慣用句などが普通に使用されていて、辞書をひいたり意味を調べたり・・。
「ちゃんと知りたい」という思いから「語彙ノート」的なものも作りました。
そうやってもがいているうちに少しずつ語彙も増えていったのは実感しました。
今回改めてこの本を読んで「思考する」ことから逃げてはいけないな、と再確認しました。

